ダイビングの時に、「えっ、そんなこともできないんですか?」と言われたことがありますか?

こんな失敗経験や、悩みをもっていませんか?

ダイビングをしたことがある人ならば、一度や二度は思ったように潜れなかった経験があると思います。
・耳抜きがうまくいかなかったり
・潜降でなかなか沈まなかったり
・安全停止が浮いてしまったり
と、誰しもが一度は経験をしたことがあると思います。
インストラクターをしている私も、まだ素人でダイビングを始めた頃には、そんな経験が何度もありました。

陸に上がった後に、ガイドやインストラクターから言われたこと

そんな失敗をしてしまうと、潜り終わって陸に上がるとなんだか気まずいですよね。
それなのに、担当したガイドやインストラクターから、怒られたり、上から目線で文句を言われたりしたことってありませんか?
言葉ではなくても、目を吊り上げたような怒った顔で、睨まれた、なんてこともあるかもしれません。

ファンダイビングだから経験します

実はこれは、体験ダイビングの人はまず経験しないと思います。
経験するのは、きまってファンダイビングの方だと思います。

ファンダイビングって何?

ファンダイビングと言うのは、Cカードを持ったお客さんが海を楽しむツアーのことを言います。
Cカードと言うのは、いわゆるダイビングのライセンスです。
ダイビング団体が定めた基準をクリアしたダイバーが、Cカードをもらえます。
一般的なオープンウォーターダイバーは、4本ダイビングをするとそれがもらえます。
もちろんダイビングについての勉強もします。
CカードのCは、Certification(認定)のCです。
なので、Cカードを持っているダイバー同士が、プロのガイド無しでも潜ることができることになっています。
とはいっても実際には、ガイドと呼ばれるプロと一緒に潜るのが一般的です。
なので、ガイドもファンダイビングでは、最終的には「自己責任で潜ってください」と言う書類にサインをもらいます。

ガイドは、海も山も同じ役割なんだけど、、、

ではガイドの役割ですが、これは海も山も一緒です。
海のガイドもお客さんが安全に楽しめるように、海の中を案内するのが役割。
お客さんは海の中の地形や魚の生態を知りませんから、ガイドがそれを案内します。

例1 耳が抜けない

ただ海と山では大きな違いがあります。
例えばエントリーして間もなく、水面から海の中をのぞくと、もうそこにマンタがぐるぐるしているとしましょう。
ガイドが急いで潜ろうと急かすのですが、お客さんは耳が抜けないと潜っていくことはできません。
ガイドが足や腕を引っ張って、強引に潜らせようものならば、お客さんは鼓膜を傷めてしまう可能性もあります。
一旦耳を傷めると、頭痛や吐き気がしたり、ひどくなると飛行機に乗れなくなります。
最悪は鼓膜が破れて、耳が聞こえなくなることもあります。

そんな時、「何で耳抜きができないんですか?」というガイドがいます。
「あなたが耳抜きできないから、マンタが逃げてしまったじゃないですか?」なんて文句を言われたりします。
実際、私のショップのリピーターさんが、日本で潜った時に、そう言われたそうです。

例2 潜降がなかなか沈まない

同じような環境でやはりマンタが、水深15mくらいのところにいたとしましょう。
マンタなどの大物がいる場所は、得てして潮の流れが強かったりします。
そんな時、上手に潜降できればいいのですが、初日の1本目などは意外と潜降に戸惑う人が多いです。
ウエットスーツがまだ乾いた状態で、沈みにくかったり、久しぶりのダイビングで焦っていたのかもしれません。
早く潜らなければ、と焦れば焦るほど、呼吸が早くなって沈めないものです。

そんな時に先に潜降したガイドが、深い方から自分を見上げて「早く下りてこい!」とサインを出しているのをよく目にします。
でも流れが強い所では、どんどんガイドと離れてしまって、余計に焦ってしまいます。
結局マンタを見逃してしまって、船に上がってきてから「なんで潜降ができないんですか?」と言われたりします。
リピーターのお客さんは、「申込書にはフリー潜降できるって書いてありましたよね」と言われたそうです。

例3 ガイドについていけずに、はぐれてしまう

あと、お客さんがガイドを見失ってしまうことを、ロストと言うんですけど、そんなことも稀に起こります。
事前に打ち合わせをしておくので、事故になることはないのですが、船に上がってからガイドに「なんで俺についてこなかったんですか?」って言われているのを見たことがあります。
欧米人とか、まだダイビングの歴史が浅い中国人のガイドに多いのですが、ガイドが全く後ろを振り向かずに、どんどん泳いで行ってしまいます。
ガイドはプロだから、履いているフィンは、一蹴りでぐんぐん進むようなフィンです。
それに比べてお客さんは、ペラペラでいくら蹴っても全然進まないようなレンタルフィン。
お客さんは必死にガイドについていこうとするのですが、いくら蹴っても進まないから、どんどん焦って呼吸が早くなっていきます。
そうするとどんどん浮いていきますね。
ガイドが振り返った時にはお客さんはいなくて、水面に浮いていたりします。
「なんで俺についてこないんですか?」って言われたって、「ついていけないんですよ!」って言い返したいけど、自分に非があると思うからそんなことは言えません。
船の上で、延々とお客さんに説教をしているガイドの姿を、何度も見たことがあります。

例4 器材セッティングを忘れてしまっている

海の中ではないですが、器材のセッティングでもそんなことがありますね。
ダイビングは潜るときに必要な器材を、タンクにセットしなければなりません。
ダイビング講習の時は、少なからず数回セットして、自分一人でできるようにすることになっています。
なので、Cカードを持っている認定ダイバーならば、だれもが器材セッティングができるはずなんです。
でも数ヶ月潜っていなかったり、まだビギナーのうちは、覚えたはずの器材セッティングをすっかり忘れてしまっています。
「BCDから先につけます」とガイドが言っているのに、レギュレーターからつけようとしている人をよく見かけます。
そもそも「BCDって何だったけ?」と言うレベルです。
そんな時に、ガイドから「あなた、Cカード持っているんでしょ。なんで器材セッティングができないんですか?」なんて言われているのもよく見かけます。
でも毎日やっているわけではないので、忘れていて当たり前なんですよね。
逆に毎日潜っていたら、絶対に忘れないし、間違えないです。

オープンウォーターが取れたら、もう立派なダイバーなの?

ダイビングってとても魅力的なレジャーです。
自然の中で、非日常の世界を体験できます。
Cカードの一番代表的なオープンウォーターダイバーになるには、勉強をして、4本ダイビングするだけで、資格が取れます。
その資格はもう立派なダイバーです。ということになっています。
ダイビング団体がそう言っています。

でも実は自動車の免許などのように、法律で認められたものでないです。
しかも基準は意外とあいまいだったりします。
水深6m程度しかなく、透明度もほとんどないビーチでも講習はできます。
そこでCカードを取ったというお客さんが何人もいます。
しかも透明度もないので、潜った時間は30分弱。
そんなダイビングを4回潜ったみたいです。
それでもとりあえず既定のスキルができているので、オープンウォーターに認定されたんですね。

オープンウォーターを取れても、すぐに上手に泳げるわけではない

オープンウォーターを取得したお客さんは、ダイビング講習で「これからあなたは魅惑的な海の世界を、思う存分楽しめます」なんて教わります。
なのでマンタなどを見たくなるのは当たり前です。
でも実際にCカードを持っているからと言って、どんな海でも上手に泳げるかと言ったら、そうではありません。
上のようなことが起こるのは、当たり前です。
そんな時に「なんで、そんなことができないんですか?」と言われたらどうでしょうか?

上から目線で、そんなこと言っているガイドやインストラクターを見た時、私は「それってどうなの?」と思ってしまいます。
「お客様にたいして失礼でしょ」という意味じゃないんです。
確かにそれもあるんですけど、お客さんを自分と同じレベルで見ているってことが不思議なんです。

ガイドやインストラクターなど、プロが勘違いしている点

Cカードを持っている=ダイビングがしっかりできる。
そうプロが思っているから、「なんでできないんですか?」って言えちゃうんですね。
例えお客さんはCカードは持っていても、素人なんです。
プロのガイドのように、毎日潜っていないんです。
お客さんだって、毎日潜っていれば、上手にできるはずなんですけど、仕事があったり、旅行に来なければダイビングができない人ばかりなんです。
だからうまくいかなくって当たり前なんですね。
でもCカードを持っているっていうから、ガイドもお客さんも勘違いをします。
ガイドはいらいらして、お客さんを叱っているし、お客さんも上手にできなかったから委縮してしまう。
それじゃ、ファンダイビングじゃないですよね。

ダイビングの第一の目的は、安全に戻ること

PADIのアドバンスの教科書を見ると、一番最初に「ダイビングの第一の目的」っていうのが書いてあります。
ダイビングの第一の目的は、「ダイバー全員が、安全に戻ること」
魚を見たり、写真を撮ったりするのは、第二の目的と書いてあります。
これってとてもいいことが書いてあるな、と常々思っています。

プロのガイドは特に、これを蔑ろにしてはいけないと思います。
お客さんのスキルは千差万別、その時の体調によっても異なります。
海も自然なので、透明度や流れなど、その瞬間瞬間で状況が異なります。
そんななかでも「ダイバー全員が、安全に戻ること」を考えていたら、けっして上から目線にはならないですね。
「なんでできないんですか?」なんて口が裂けても言えません。
お客さんもまた、自分のスキルについて、謙虚になることが安全への近道です。

今回たまたま、私のリピーターさんが日本で潜った時の話をLINEで送ってくれたので、今まで考えたことをブログにすることにしました。
そのリピーターさんは、上から目線で文句を言われて、とても怒っていましたし、自信も失っていました。
せっかく楽しみにしていた3日間のダイビングだったのに、初日の3本目はパスをせざるを得なくなって、残りの2日間もキャンセルしたそうです。

わたしはまだまだ、ガイドもインストラクターも続けていきたいと思っています。
いつも自然に対して謙虚な姿勢で、安全を第一に、海を楽しんでいけるように努力したいと思います。