先日ご一緒に潜った体験ダイビングのお客さんの動画を2つ紹介して、ダイビングスキルの説明をしてみたいと思います。
・1つは鼻呼吸について
・もう1つは、力づくで沈もうとしないこと
の2つです。
このお客さんは、一つ前のブログでも紹介したように、シニア世代の一歩手前にかかる年齢のお客様です。
10数年前に、1度体験ダイビングをしたときは耳抜きが出来ずに、数分で上がってしまった経験があります。
ただ、本人の性格はとてもアクティブで、チャレンジ精神旺盛です。
今回は初めての方と同じように、フリップチャートを使って、事前に船上でダイビングの説明をしました。
トラブル練習も船上と、水面下2m程度のところで行っています。
そのため、10数年前のように耳抜きができないということもなく、潜降もとてもスムーズにできました。
では1本目の動画ですが、これは潜り始めて20分くらい経ってから撮影したものです。
姿勢もよく、顔も上がって、フィンキックをつかって、上手に自分の力で泳げていますね。
ピースサインも出して、とても楽しそうに泳いでいます。
10年前のトラウマや年齢を考えると、体験ダイビングとしてはとても上手な方だと思います。
鼻呼吸のメリットとデメリット
ただ、注目してほしいのは、呼吸方法です。
吐き出す空気は鼻から出していますね。
もし陸上ならば、鼻で吸って、鼻から息を吐くと思います。
ただ海の中では、マスクで鼻が覆われているので、鼻からは息を吸えません。
なのでレギュレーターから息を吸うことになります。
船上の説明では鼻は使えないので、口呼吸にしてください、とは伝えています。
ただ体験ダイビングは特にダイビングのトレーニングを受けていないので、自然に口で呼吸をして、鼻から息を吐くといった、陸上にいるときのような呼吸をする人は非常に多いです。
この鼻呼吸の最大のメリットは、楽に呼吸ができることです。
本来ダイビングですべき口呼吸(口から息を吐きだす)は、意外と難しいです。
それに比べて、鼻呼吸はとても気持ちよく呼吸ができます。
鼻呼吸は徐々に体が浮いていく
ただデメリットもいくつかあります。
最も問題になるのは、浮力がとりづらいことです。
鼻呼吸は楽なのですが、続けて行くと徐々に体が浮いていきます。
体の浮き沈みは、体の中にある大きな浮袋の肺がつかさどっています。
肺は縮まってから、数秒して体が沈んでいきます。
海の中では数秒のタイムラグがあるので、息を吐いたからと言って、すぐには沈んでくれません。
そのため鼻呼吸はその肺が十分に縮まらないので、体が沈んでいかないのです。
深場ではそれでも問題はありませんが、浅場になると徐々に体が浮いてきます。
急浮上ではないので、パニックになったりすることはないのですが、特に体験ダイビングや初心者の方は、自分が浮いていることになかなか気づかないことが多いです。
鼻呼吸はマスクが曇って、水も入ってくる
もう一つのデメリットは、マスクが曇ることです。
今回のお客さんも潜る前にマスクを念入りにクレンザーで磨いて、油膜を落としておきました。
ただ、鼻呼吸をしてしまうと、どうしてもマスクが曇ってきます。
鼻息が荒い、なんて言いますが、焦っていると特に曇りやすいものです。
また鼻呼吸をしていると、マスクの中にどうしても海水が入ってきます。
マスクから空気が出ていくと、逆にマスクの中に水が入ってくるというわけです。
もっとも鼻呼吸はマスククリアと同じですから、海水が入ってきては出ていくの連続ですが、マスクの下の方に水が溜まっている人は意外と多いです。
力づくで沈もうとしている人の特徴
では2つ目の動画になります。
これは鼻呼吸をして、水深が徐々に上がってしまったので、なんとか沈もうと努力しているところを撮影しました。
初心者の方や、少し潜り込んだ男性のお客さんでも、こんな風に沈もうと頑張っている人の姿をよく見かけます。
今回のお客さんは、1つ目の動画で説明したように、徐々に体が浮いてきました。
それに気が付いて、少しでも沈もうとするのですが、気持ちが焦っているので呼吸は止めて、苦しくなったらバフっと吐いています。
体の角度は当然、下に傾けていますが、もう目線は砂しか見えていません。
キックで沈もうというよりもむしろ、手を使って手のかきで沈もうとしています。
確かにこれでも一時は沈むことが出来ます。
でも力づくで沈んだ場合は、またすぐに浮いてしまいます。
沈みたい時には、本当はどうすればいいのか?
では沈むときは本当はどうすればよいのでしょう。
浮力をつかさどっているのは、肺ですね。
なので、肺を縮めて深度を下げるのが正解です。
そのためには、まずは体の力を抜きます。
姿勢を無理に傾けたり、起こしたりする必要はありません。
鼻呼吸ではなく、口からゆったりと息を吐いていきます。
ここで重要なのは、肺を縮めるように口から息を吐いていくということです。
肩の力を抜いて、腕から胸にかけての筋肉で、肺を絞るようなイメージができるととても良いです。
肺が縮んで、やはり2~3秒経つと、じわじわと体が沈んできます。
ただこの口呼吸が出来ても、体が沈む前に焦って、また息を吸ってしまうと体は沈みません。
なので体の力を抜いて、ゆったりと口から息を吐くことが大切になります。
脱力することが何よりも大切です。
よくありがちな失敗例
逆にダメなのは、口をとがらせるようにして「フーッ、フーッ」と浅い呼吸をしてしまうことです。
安全停止中や、水面下の浅場で、一生懸命息を吐いている人を見かけますが、決まって焦っていて、どんどん浮き上がっています。
インストラクターもそんな姿を見て、一生懸命に「息を吐いて!」とハンドシグナルを送っていますが、お客さんは余計にがんばって、逆にどんどん浮き上がっていきます。
実はこの浅い呼吸では、肺は縮まらないのです。
なので本人は頑張って息を吐いているつもりでも、ちっとも体は沈んでいきません。
むしろ逆にどんどん浮き上がってしまいます。
体の浮袋の肺が、パンパンに膨らんでしまっているからですね。
とても上手な失敗の見本でした
今回は体験ダイビングのお客さんの動画で説明をしました。
とても短いものですが、なんとなくイメージをつかんでいただけたでしょうか?
本人の名誉のためにも少しだけ、説明をしておくと、この動画を撮れるということは、危険ではなかったということです。
パニックになっていたら、とても動画なんて撮れません。
とても上手な失敗の見本だったわけです。
ちなみにこの動画の後、「沈みたい時は、口から息を吐きだして!」と何度か、スレートを使って伝えてみました。
そうすると体が上手に沈むんですね。
本人もそれがわかったようで、ぐっと安定して潜れるようになりました。
私って天才?!
体験ダイビングのお客さんは、変な癖がついていません。
ただ陸上の感覚をそのまま、海の中に持ってきてしまいます。
呼吸もそうですが、体を起こしてしまったり、体をばたばたさせることが多いです。
ただ、1本目が終わった後に、自分の泳ぎをタブレットで見返しながら、改善点を呼吸や姿勢などの改善点を話すと、2本目からは見違えるように上手に泳げるようになります。
変な癖がついていない分、正しい方法が自然とできるようになるものです。
2本目が終わるころには、「私って天才?!」と皆さん思うみたいです。
体験ダイビングなので、ずっとお客さんを捕まえていれば、お客さんも楽ですし、インストラクターも実は楽だと思います。
でもダイビング本来の浮遊感を、体験ダイビングでも楽しんでもらうために、こんなちょっとした失敗もして、「上手に泳ぎたい」という気持ちを持てるようにしています。
海を楽しむならば、やはりスキルが大切
今回は、ダイビングでは鼻呼吸ではなく口呼吸にすることと、力づくで沈んでいかない、という2つを関連付けてお話してきました。
体験ダイビングは基本的に2本潜るだけ(オプションで3本目も潜れます)なので、スキルの話はほんの少ししか伝えることが出来ません。
でもオープンウォーター講習ならば、3日かけて上手に泳げるような説明やスキル練習をしていきます。
・本格的な体験ダイビングをしてみたい
・しっかりしたスキルを身につけられるようなオープンウォーター講習をしてみたい
と思った方は、ぜひ私のショップにお問い合わせください。
今回のお客さんも、「ぜひ次はオープンウォーター講習を受けに、プーケットに来ます」と言ってくれました。
多くのお客さんにプーケットの海を楽しんでいただきたいです。





