今日も天気の良いプーケット。
でも朝歩いたときは、道路がぬれていたので、夜のうちに雨が降ったようです。

お客さんの浮上スキルを見て、不思議に思うこと

さて今日もダイビングスキルのお話をしたいのですが、その前に少しだけ、、、、

雑誌と私の違い

雑誌を見る

実はダイビングのスキルアップ術については、色々なところで紹介されています。
代表的なのが、ダイビング雑誌。

ただ私も見ましたが、私の内容と雑誌の内容はところどころ異なります。
私は現場で得た知識を、自分なりに解釈してお伝えしています。
でも雑誌はと言うと、広告などの関係もありますから、例えば曇り止めなどは、”市販の曇り止めを使うのが良い”と書いてあります。
当たり前ですね。
唾でよかったり、ライターであぶるでは、聞こえもよくないですし、儲かりませんからね。

《参考》
12/29ブログ ダイビングマスクの曇り止め へ

でも実は唾やライターであぶった方が、より効果的なことは私は現場で確認をしています。

長くなってしまったので、本題に入りましょう。

浮上のスキルは、実は難しい

浮上は潜降とならび、難しいスキルだと思います。
耳抜きのようなことはないので、浮上ができないという話はあまり聞きませんが、体内の窒素や、潜水病などにもかかわってくるスキルなので、間違って行うと命とりです。

お客さんの中にはこんな方がいます

ファンダイビングでお客さんと一緒に潜っていると、「えっ」と思うことがあります。

BCDの空気を全部抜いてしまう人

まずその一つが、浮上のサインが出るとBCDの空気を全部抜いてしまう人がいます。
実は雑誌のスキルアップ術にも”浮上前はBCDの空気を抜かなければならない”と書いてあります。

なぜ空気を抜かなければならないのか?
おそらく浮上に伴って、BCDの空気が膨張するので、急浮上を防ぐ意味でそうするように、と書いてあったのかもしれません。
ただ中性浮力がとれていた状態が、空気をすべて抜いてしまうと、不安定になってしまいます。

浮上はそもそも頭を上にして立った状態になります。
それだけでも実は沈みやすい姿勢になっているはずです。
それは潜降の姿勢を考えればわかるはずです。
その上BCDの空気を全部抜いてしまったら、沈んでゆくと思います。

息を吐きながら浮上する人

あと雑誌には”浮上中は息を吐きながらが、原則”と書いてあります。
これもおそらく、肺の過膨張を防止するためだと思うのですが、浮上は浮上速度を抑えるために、20秒~30秒かけて浮上する必要があります。
この間、息を吐き出し続けるのは、なかなかつらいことです。

実は、エア切れの際にコントロールされた浮力方法で、救急スイミングアセントというのがありますが、この練習は呼吸は吐きながら行います。
なかなか難しいスキルで、上手にできる人は少ないです。

なので、普通の浮上で肺が過膨張を起こすから、息を吐きながらが原則というのは、難しいと思います。

PADIのテキストにも書いていない

PADI

実は、普段の浮上で息を吐きながらが原則という文言は、PADIのオープンウォーターのテキストには書いてありません。
”普通の呼吸をする”と書いてあります。
また、PADIのオープンウォーターには、浮上前にBCDの空気を全部抜きなさいとは書いてありません。

浮上できないのは、潜降と同じ方法だから

実は、BCDの空気を完全に抜いてしまったビギナーのお客さんは、なかなか浮上できません。
なかには、一生懸命キックをしているにもかかわらず、深度は全く変わらない人もいます。

BCDの空気を抜いて、息を吐きながらは、潜降の方法と同じだから、浮上できないのは当たり前だと思います。
ではどうすればいいか?
それは後述いたします。

BCDに空気を入れて浮上する人

ベテランダイバーがしたときには、びっくり!

あと一つ、お客さんの中には、吸気ボタンを押して、BCDに空気を入れて浮上している人がいます。
またはボタンを押していないまでも、吸気ボタンに指をのせて浮上する人もいます。

ビギナーならいざ知らず、200本近く潜っているお客さんがBCDに空気を入れて浮上したのを見たときは、びっくりしました。
今まで誰一人としてガイドが注意をしなかったのか?と思ったからです。

肺の過膨張をおこす危険な行為

BCDに空気を入れれば、当たり前ですが浮上できます。
ただ浮上に伴ってBCDの中の空気は膨張していきます。
当然浮上速度は上がってしまうので、急浮上になりがちです。
それによって肺が過膨張を起こす可能性があるので、けっしてやってはいけない行為だと、オープンウォーター講習の時に教わっているはずなのです。

だからPADIのオープンウォーターのテキストでも、排気ボタンに指を置いて、BCDの中の膨張してゆく空気を時々排出してゆくと書いてあります。
ただ実はこれが浮上では一番難しいテクニックでもあります。

浮上速度を守ることは、身体のため

ロケットのように浮上するお客さん

ロケット

また浮上のスピードも、1分間に18mの速度となっています。
最近では1分間に9mの速度と言われているそうですから、5mの安全停止から水面までを、およそ30秒近くかけて上がってゆくことになります。

ただこの速度もお客さんを見ていると、なかなかできていません。
浮上のサインが出た途端、安心してロケットのように、ピューッと上がってゆく方はとても多いです。

例え5mの深度からでも、急浮上は肺ばかりでなく、血液に溶け込んだ窒素が噴き出す可能性や、頭上にボートが来る可能性もあるので、とても危険だと思います。

キックで上がるのは難しい

PADIでは”泳いで浮上する”と書いてあるけど

実はPADIのオープンウォーターのテキストには、”泳いで浮上する”と書かれています。
ただキックを使って、5mを30秒かけて上がるのは、無理があると思います。
陸上で考えてもわかりますよね。
1mを6秒かけた歩くのは、とても難しいです。

呼吸を使えば、ゆっくり浮上できる

そのため私は、浮上は通常の呼吸を使って上がるようにアドバイスしています。
息を吸った後、少しだけ身体が浮く感じを作ってから息を吐き出します。

《参考》
12/23のブログ ダイビングの呼吸と浮力の関係 へ

いつもは体が軽く沈むまで吐くようにと言いますが、浮上時はそこまで吐かなければ、徐々に体は上に向かってゆきます。
息を止めているわけではありませんから、肺の過膨張も起こりません。

中性浮力を保ったままなので、BCDの中にはわずかに空気が入っているかもしれません。
なのでBCDの排気ボタンに指をかけて、わずかに膨張するBCDの空気を排出する準備はしておきます。

ただウエイト量をしっかり調整して、適正なウエイト量にしていれば、BCDにはさほど空気は入っていないはずです。

もちろんのキックは使いません。
なので浮上速度は極めてゆっくりと上がってゆくことができます。

普段からダイビングの呼吸については、細かく話をしているので、どのお客さんもとても上手に浮上をしてゆきます。

その他にやらなければならないこと

上を向いて、頭上を確認する

安全な浮上という意味だとそれ以外にも、頭上の確認がとても大切です。
意外と水面を見ながら浮上している人は少ないです。
ダイビングボートに限らず、停泊中のスピードボートや先に浮上したダイバーなども水面にいることがあります。

エンジン音を確かめる

スピードボート

またダイビングボートやスピードボートが急にやってくることもあります。
エンジン音をしっかり聞くことも重要です。

必ず浮力を確保する

そして最後に浮上したら必ず浮力を確保すること。
これも極めて重要です。

浮上して安心してしまって、BCDに空気を入れていないお客さんは意外と多いです。
せっかく上がったのにまた沈んだり、船を待っている間ずっと足をバタバタして体力を消耗してしまうのは危険です。

正しい知識を教えたい

今日は浮上時にお客さんがとる、不思議な行動をご紹介しました。
ただこれって、お客さんが独自に考えて行ったのではないと思います。
オープンウォーターにしろ、アドバンス講習にしろ、必ずインストラクターが指導しているはずです。
少なくともお客さんに危険が及ぶようなことだけは、教えないようにしてゆきたいと思います。